パワポケはギャルゲーより面白いか
 
 
 
ときたま、パワポケはそこいらのギャルゲーよりも面白いという言葉を聞きます。
もちろん、そこには個人の感性というものが絡んできますから、
その意見を否定はしませんが、私はギャルゲーの方が面白いと思うのです。
 
パワポケは何が面白いのか。
そして何が面白くないのか。
 
今更ですけれども、ちょっとそんなテーマに触れてみようかと思います。
……とは言っても、そう今更というものでもありません。
実は、このテーマについては2007年に、前身サイトであるパワポケ荘の最後のコラムで触れています。
そのまま同じ文章を持ってくるのは流石に読みづらいので書き直してみましょう。
ああ、それにしても10年前ですよ奥さん。私四捨五入すれば、なんとか二十歳ですよ……。
 
 
 
さて「ギャルゲーの方が面白い」ですが、ちょっとばかり語弊がある言葉です。
正しくは「ギャルゲーというジャンルの方が、面白い物を作りやすい」というべきですね。
 
パワポケの良さを表現する時には『ブラック』という言葉が出るのですが、これだけでは限界があるんです。
確かに、パワプロにはない清濁併せ持ったお話ですが、それだけで「人間を深く表現している」とは言えません。
 
例えば茜。父親に殴られて育った彼女がDVにならないのには、違和感を覚えます。
また、彼女の悩みが、作中時間の三年で解消できるとも思いにくい。
なぜ、そうしないのか。『これは野球ゲームの付属アドベンチャー』だからに他なりません。
 
最初からギャルゲーとして作るのであれば、全労力をアドベンチャー要素につぎ込めます。
そうすれば、茜の持つ悩みを、もっとリアルに、そして的確に描写できるでしょう。
ギャルゲー、馬鹿にはできませんよ。小説五冊分は当たり前、十冊分のテキストがあるゲームもザラなんですから。
でも、パワポケのサクセスには、それだけのシナリオを盛り込めない。
ハードスペック、システム、そして開発費という制限があるゲームなんです。
 
 
しかし、パワポケは面白い。それは間違いありません。
じゃあ、私達がパワポケをやって「面白い!」と思えるのは何故なのか。
もちろん、シナリオやキャラクターのレベルが高いという事に他なりません。
上記のような制限の中で、スタッフさんがより良いものを作った結果です。
その点について、私は『野球』という要素が生かされた結果でもあると思います。
 
試合への燃え、球団に関する思惑、チームメイトとの友情、野球への情熱を支える彼女候補……
どれも『野球』というシナリオに寄り添わなくては、成り立ちません。
「パワポケの野球はオマケ」と言われる事もありますが、野球あってこそのパワポケだと思うのです。
 
『メインは野球』という、アドベンチャー要素への制限……、
それを逆に、ドラマの根っことして据えた結果、パワポケという怪作が誕生したのではないでしょうか。